ボール紙の抜き加工とは?基本と注意点をわかりやすく解説

ボール紙は、厚みと強度に優れた実用的な紙素材で、什器や台紙、仕切り材など幅広く使われています。
再生パルプを主原料とした環境に配慮した素材でありながら、しっかりとした厚みと剛性を持つため、商品ディスプレイ用の什器、製品の台紙、梱包材の仕切り、ファイルの表紙など、さまざまな用途で活躍しています。コストパフォーマンスにも優れており、実用性重視の製品に最適です。
その加工工程の一つに「抜き加工」があり、製品形状を整えるために欠かせないステップです。ボール紙を任意の形状に加工することで、機能性の高い製品や、組み立て式の什器などを製造できます。
この記事では、ボール紙の抜き加工について、その基本と注意点を簡潔にご紹介します。ボール紙を使った製品の製造を検討されている企業担当者の方は、ぜひご参考ください。
ボール紙の抜き加工とは?
抜き加工とは、専用の型を使って紙を打ち抜く加工方法で、決まった形状を大量に加工する際に用いられます。ボール紙の抜き加工では、トムソン型(金属刃を木型に埋め込んだ型)を用いたプレス加工が一般的です。
トムソン型には、切断用の刃線と折り目を入れるための罫線を組み合わせることができ、一度の加工で複雑な形状の製品を効率的に製造できます。什器のように組み立てが必要な製品でも、抜き加工と罫入れを同時に行うことで、組み立てやすい製品設計が可能になります。
ボール紙は再生パルプを重ねた厚紙で、しっかりとした質感がありながらも比較的加工しやすいため、多くの製品で採用されています。チップボールとも呼ばれるこの素材は、表面が灰色または茶色で、コートボールのような白色の塗工紙と比べると外観は劣りますが、その分コストを抑えられるため、実用品に広く使われています。
ただし、厚みや構造の特性から、適切な加工条件の見極めが重要です。ボール紙特有の特性を理解せずに加工を行うと、品質不良や加工トラブルにつながる可能性があります。
ボール紙の抜き加工で注意すべきポイント

ボール紙の抜き加工では、その素材特性に応じた注意点があります。ここでは2つの重要なポイントを解説します。
厚みと硬さに応じた調整が必要
ボール紙は通常の紙よりも厚く硬いため、刃圧や型の設定が重要になります。適切な力加減で加工しないと、断面が荒れたり、不要なバリが発生することがあります。
一般的なボール紙の厚みは0.5mm〜2.0mm程度と幅広く、厚みによって必要な刃圧が大きく異なります。圧力が不足すると、刃がボール紙を完全に切断できず、断面に繊維の引き残しが発生します。逆に圧力が強すぎると、ボール紙が潰れたり、断面が毛羽立ったりして、製品の品質が低下します。
また、ボール紙の硬さは、使用される再生パルプの種類や配合、製造方法によっても変わります。同じ厚みでも、密度の高いボール紙と低いボール紙では、加工に必要な刃圧が異なるため、素材の状態を見極めた調整が必要です。
刃の切れ味も重要な要素です。ボール紙は繊維が短く、硬い素材であるため、刃の摩耗が早い傾向があります。切れ味の落ちた刃で加工を続けると、断面品質が著しく低下するため、定期的な刃の点検と交換が品質維持の鍵となります。
層構造による剥がれへの配慮
ボール紙は複数の紙を貼り合わせた層構造をしており、抜き加工時に層が部分的にはがれてしまうことがあります。これは、ボール紙特有の課題であり、加工品質に大きく影響します。
層間剥離は、刃圧が不適切な場合や、刃の切れ味が悪い場合に発生しやすくなります。刃がボール紙を押しつぶすように切断すると、層の接着面に負荷がかかり、剥がれの原因となります。また、湿度の影響で層間の接着力が弱まっている場合も、剥離が起きやすくなります。
こうしたトラブルを防ぐためには、切れ味の良い刃物や正確な型の使用が効果的です。鋭利な刃で素早く切断することで、層構造への負荷を最小限に抑え、綺麗な断面を実現できます。また、刃の角度や形状も、層間剥離の防止に影響します。
さらに、ボール紙の保管環境にも注意が必要です。高湿度の環境に長時間置かれたボール紙は、層間の接着力が低下している可能性があるため、加工前に適切な環境で調湿することが推奨されます。
まとめ
ボール紙は扱いやすく汎用性の高い紙素材ですが、抜き加工では厚みや構造に応じた工夫が求められます。刃圧や型の設計に注意を払うことで、きれいな断面と高い寸法精度を保つことができます。
特に、ボール紙特有の層構造による剥がれへの配慮は重要で、適切な刃の管理と加工条件の設定が、品質の安定につながります。また、素材の状態や環境への配慮も、高品質な製品を安定的に製造するための重要な要素です。
