シールの抜き加工とは?特徴と注意点をわかりやすく解説

シールの抜き加工とは?特徴と注意点をわかりやすく解説

シール製品は、商品ラベル、販促ツール、日用品など、さまざまな用途で活用される身近なアイテムです。

食品や化粧品のパッケージラベル、店頭のPOPステッカー、宛名シール、バーコードラベルなど、私たちの生活のあらゆる場面でシールが使われています。貼って剥がせる手軽さと、情報を伝える機能を兼ね備えたシールは、商品や情報の伝達に欠かせない存在です。

その製造過程において重要な工程の一つが「抜き加工」です。印刷されたシート状の粘着紙から、個々のシールを使える状態にするために、この抜き加工が不可欠となります。

素材や粘着層の構造に配慮しながら抜き加工を行うことで、剥がしやすく美しいシールを作ることができます。本記事では、シールの抜き加工について、基本と注意点をわかりやすくご紹介します。

目次

シールの抜き加工とは?

シールは、印刷された粘着紙を所定の形に切り抜き、使いやすくするために「抜き加工」が施されます。一般的には、トムソン型(金属刃を埋め込んだ木型)を用いたプレス加工や、用途に応じてプロッター・レーザー加工が行われます。

トムソン型を使ったプレス加工は、大量生産に適しており、数千枚から数万枚といった規模のシール製造で広く使われています。一度型を製作すれば、同じ形状のシールを効率的に生産できるため、コストパフォーマンスに優れています。

一方、プロッター加工やレーザー加工は、型を作らずにデータから直接加工できるため、小ロット生産や試作品、複雑な形状のシールに適しています。デザイン変更にも柔軟に対応でき、短納期での製造も可能です。

シールの抜き加工では、粘着紙の表層と粘着剤部分をカットしつつ、裏面のセパレーター(剥離紙)を切らずに残す加工が重要です。これは「ハーフカット」と呼ばれる技術で、シール加工における最も重要なポイントの一つです。これにより、ユーザーが簡単に剥がして使えるシールが完成します。

適切なハーフカットが施されたシールは、台紙からスムーズに剥がすことができ、粘着面も綺麗な状態を保ちます。逆に、ハーフカットが不適切だと、剥がしにくかったり、台紙ごと剥がれてしまったりと、使い勝手が大きく損なわれます。

シールの抜き加工で注意すべきポイント

シールの抜き加工で注意すべきポイント

シールの抜き加工では、粘着紙特有の構造を理解した上での対応が求められます。

剥離紙を切らない適切な刃圧設定

シールの抜き加工では、「表面のみを切り抜き、裏の剥離紙は切らない」ことが基本です。刃の深さが足りないとシール部分が切り抜けず、ユーザーが剥がそうとしても台紙から剥がれない、使えない製品になってしまいます。逆に深すぎるとセパレーターまで切れてしまい、シールを剥がす際に台紙も一緒に剥がれたり、台紙がバラバラになったりと、使用時のトラブルにつながります。

粘着紙の厚みや粘着剤の層に応じて、刃圧調整が重要です。粘着紙は製品によって構造が異なり、表面基材の種類(上質紙、アート紙、PETフィルムなど)、粘着層の厚み、剥離紙の厚みなど、さまざまな要素が刃圧設定に影響します。

素材特性や形状に合わせた刃型設計

シールの素材(アート紙、PET、和紙など)によって硬さや滑りやすさが異なるため、刃型の設計も変わってきます。アート紙は比較的硬く、刃が入りやすい素材ですが、PETフィルムは柔軟性があり、切断時に伸びやすい特性があります。

これらの素材特性を理解した上で、刃の高さ、角度、配置を最適化することが重要です。また、粘着層の種類(強粘着、弱粘着、再剥離タイプなど)によっても、刃への付着具合が変わるため、それに応じた対策が必要です。

特に、角の鋭い形状や細長い形状のシールでは、刃の配置を工夫しないと、角が潰れたり、形状が歪んだりすることがあります。また、複数のシールを同時に抜く場合は、刃の配置バランスも考慮する必要があります。

まとめ

シールの抜き加工は、粘着素材ならではの層構造や形状に配慮した繊細な工程です。適切な刃圧と刃型の設計、そして素材への理解が、品質の高いシール製品づくりに直結します。

表面と粘着層のみをカットし、剥離紙を残すハーフカットの技術は、経験と繊細な調整を要する作業です。素材の種類、形状の複雑さ、製造ロットなど、さまざまな要素を考慮しながら、最適な加工条件を見極めることが重要です。

目次