粘着紙の抜き加工とは?特徴と注意点をわかりやすく解説

シールやラベルなどに使われる「粘着紙」は、印刷・加工性に優れた機能性のある紙素材です。
商品ラベル、宛名シール、ステッカー、販促用POP、バーコードラベルなど、私たちの身の回りにある多くの製品に粘着紙が使われています。貼って剥がせる手軽さと、印刷による情報伝達機能を両立できる点が、粘着紙の大きな魅力です。
その加工工程のひとつが「抜き加工」であり、製品形状を整える上で欠かせない役割を担います。円形、楕円形、星形など、さまざまな形状のシールやラベルを作るためには、この抜き加工の技術が不可欠です。
しかし、粘着紙には独自の特性があるため、加工時にはいくつかの配慮が必要です。本記事では、粘着紙の抜き加工に関する基本と、注意点についてやさしくご紹介します。粘着紙を使った製品の製造を検討されている企業担当者の方は、ぜひご参考ください。
粘着紙の抜き加工とは?
粘着紙とは、紙の片面に粘着剤(のり)が塗布され、剥離紙(セパレーター)を付けた加工紙のことです。主にシール・ラベル・ステッカーなどの用途で使われています。
基本的な構造は、上から「表面基材(印刷面となる紙やフィルム)」「粘着層(接着剤)」「剥離紙(セパレーター)」の3層構造になっています。この構造により、使用するまで粘着面を保護し、必要な時に剥がして貼ることができます。
抜き加工では、トムソン型などの刃型を使い、上層の粘着紙のみを所定の形に切り抜くことで、使いやすい製品に仕上げます。この加工により、シート状の粘着紙から、個々のシールやラベルを簡単に剥がして使える状態にします。
粘着層を適切にカットし、裏の剥離紙を残す加工には、刃圧や刃型設計の細やかな調整が必要です。通常の紙の抜き加工とは異なり、完全に切り抜くのではなく、特定の層だけを切断するという高度な技術が求められます。
この加工方法は「ハーフカット」とも呼ばれ、粘着紙加工における最も重要な工程の一つです。適切なハーフカットにより、剥離紙からシールを綺麗に剥がすことができ、使い勝手の良い製品が完成します。
粘着紙の抜き加工で注意すべきポイント

粘着紙の抜き加工では、その特殊な構造ゆえに、通常の紙とは異なる注意点があります。
粘着層の深さに合わせた刃圧設定が重要
粘着紙は、表面の素材・粘着層・セパレーターの3層構造になっており、抜き加工では表面と粘着層をカットし、剥離紙を残すのが一般的です。
この「ハーフカット」の精度が、製品の使いやすさを大きく左右します。刃が深く入りすぎると裏の剥離紙まで切れてしまい、シールを剥がす際に剥離紙も一緒に剥がれてしまったり、台紙がバラバラになってしまったりします。逆に浅すぎるとシール部分が完全にカットされず、剥がそうとしても台紙から剥がれない、使いづらい仕上がりになります。
素材や粘着剤の厚みに応じて、刃圧を適切に調整することが重要です。粘着紙の総厚は製品によって異なり、表面基材が上質紙なのかコート紙なのか、粘着剤の種類(強粘着、弱粘着など)はどれか、剥離紙の厚みはどの程度かなど、さまざまな要素が刃圧設定に影響します。
また、同じ粘着紙でも、温度や湿度によって粘着層の硬さが変化するため、加工環境に応じた微調整も必要です。経験豊富な加工業者であれば、素材の特性を見極めた上で、最適な刃圧を設定することができます。
刃型の設計も重要な要素です。粘着紙専用の刃型では、刃の高さや角度が通常の抜き加工とは異なる設定になっています。また、複雑な形状や細かいデザインのシールでは、より精密な刃型設計が求められます。
糊のにじみや貼り付きに注意
粘着剤が刃や加工機に付着すると、カット精度の低下や紙粉の付着といった問題が発生することがあります。刃に粘着剤が蓄積すると、刃の切れ味が低下し、ハーフカットの精度が安定しなくなります。また、加工機のローラーや台に粘着剤が付着すると、紙粉やゴミを引き寄せ、製品に汚れが付く原因となります。
また、高温多湿な環境では粘着剤が軟化し、貼り付きやヨレが起きることもあります。粘着剤は温度が高いほど柔らかくなり、流動性が増すため、加工時に予期せぬトラブルが発生しやすくなります。逆に、低温環境では粘着剤が硬くなり、カット時の負荷が増えることもあります。
加工前後の保管環境や、刃の清掃・メンテナンスなど、適度な作業環境管理が求められます。
さらに、刃の定期的な清掃は不可欠です。粘着剤の付着を除去するための専用クリーナーを使用し、刃を常に清潔な状態に保つことで、安定した加工品質を維持できます。加工枚数に応じて、適切なタイミングで刃の清掃や交換を行うことが重要です。
まとめ
粘着紙は、機能性と加工性を兼ね備えた便利な素材ですが、抜き加工では層構造や粘着剤の特性に応じた対応が求められます。刃圧の調整や作業環境の管理を行うことで、安定した仕上がりが実現できます。
特に、表面と粘着層のみをカットし、剥離紙を残すハーフカットの技術は、粘着紙加工において最も重要なポイントです。適切な刃圧設定と、粘着剤の管理により、使いやすく美しい製品が完成します。
